会社設立後に必要な契約の種類やルールについて詳しく解説
2021年11月05日
会社設立後にはいくつもの契約を結ばなければなりません。一般的に従業員を雇用したり業務を依頼したりするためには雇用契約、請負契約、委託契約などを結ぶ必要があります。
雇用契約では労働基準法をすべきであること、請負契約では成果物に対して報酬を支払うことなどの注意点があります。それぞれの契約について理解し、準備を進める必要があるでしょう。
会社設立後、従業員を雇う 場合には、さまざまな形の契約を結ばなければなりません。
事業主として会社を設立する予定なのであれば、どのような契約がもっとも適当か判断することが必要となります。
当記事では会社設立後に必要な契約の種類や、ルールについて詳しく解説します。
Contents
会社設立後に必要な主な契約の種類
会社設立後には従業員を雇ったり、社外の企業や人に業務を依頼したりすることがあります。
そのようなケースでは、必ず契約書を交わして契約を結ばなければなりません。
契約書の作成や締結が義務付けられていないこともありますが、口約束では後々トラブルになりかねないので、きちんと書面に残しておくことが重要です。
契約書がない状態で契約を続けていると、裁判になって大きな損害を被る恐れもあります。
会社設立後に必要な主な契約の種類は、以下の3つです。
- 雇用契約
- 請負契約
- 委託契約
雇用契約とは労働に対する対価として報酬を支払うという契約、一方で請負契約とは成果物に対して報酬を支払うという契約です。
さらに委託契約は雇用契約と請負契約の間にあるもので、一定期間の業務に対して報酬を支払うものです。
会社設立後の雇用契約に関するポイント
会社設立後には多くの場合、雇用契約を結びます。
雇用契約は会社にとって非常に重要な契約の一つなので、雇用契約書を作成して手順を踏んだうえで従業員を雇うようにしましょう。
雇用契約とは
雇用契約とは、労働者が雇用主に雇用されて労働に従事し、その労働に対して対価が支払われる契約のことです。
雇用契約にある労働者は労働法上の保護を受けられるという大きな特徴があります。
たとえば、労働基準法で定められている法定労働時間や有給の取得、労働保険への加入、社会保険への加入、不当な解雇の禁止などの保護が受けられます。
加えて、労働基準法に違反している状態が続いている場合には、労働者が労働基準監督署に通報することも可能です。
雇用契約の特徴
雇用契約の大きな特徴は、労働そのものに対して対価が支払われる点です。
雇用契約を結んでいる労働者は、雇用主に指示される業務に従事していれば対価を得ることができます。
何らかの成果物を提出しなくても報酬を得る権利があるのです。
さらに雇用契約の場合、指揮命令下で働いているという特徴もあります。
労働者は基本的に雇用主が指示した仕事を拒否することはできません。
さらに始業時間や終業時間が決められていること、就業規則があること、就業場所が決められていることなども雇用契約の特徴です。
雇用主や労働者の認識にかかわらず、こうした条件に該当する場合には雇用契約があると見なされます。
雇用契約書を作成すべき理由
雇用契約を結ぶ際には、必ず契約書を作成しておきましょう。
実は労働基準法や民法においては、雇用契約書の作成が義務付けられていません。
それでも、会社設立後には雇用契約書を作成しておく必要があります。
もし雇用契約書を交わしていないと、後々トラブルになる恐れがあるからです。
さらに雇用契約書で労働条件が明示されていない場合、許認可が下りなかったり助成金や補助金の申請が通らなかったりするかもしれません。
会社として信頼されるためにも、雇用契約書は必ず作成しておきましょう。
さらに労働条件通知書の発行も義務付けられています。
雇用する従業員が日本人かどうかにかかわらず、雇用契約を結ぶ場合には労働条件通知書も必ず発行しましょう。
会社設立後の請負契約に関するポイント
会社設立後に結ぶ別の形態の契約が請負契約です。
請負契約とは、成果物に対して依頼者が報酬を支払うという契約です。
成果物がなければ契約は不履行となり、報酬が発生しません。
請負契約を結ぶ際にも、契約書を交わし、契約の内容について齟齬がないように注意すべきです。
請負契約の特徴
請負契約は、雇用契約と異なる点がいくつかあります。
まずもっとも大きな違いは、請負契約が成果物に対する報酬である点です。
雇用契約は成果物がなくても労働に対して報酬が支払われましたが、請負契約はどれだけの時間働いても成果物がなければ報酬は発生しません。
さらに請負契約は、依頼主からの依頼を拒否することができます。
雇用主の指揮命令がある雇用契約とは大きな違いです。
加えて、請負契約の場合、始業時間や終業時間、就業場所などを自分で決定できるという特徴もあります。
自分で機械や設備、資材などを準備して仕事を行うのも請負契約の特徴です。
例として工事請負契約が挙げられます。
工事請負契約は、道路や建設物を完成させることによって報酬が発生する契約です。
納期が設定され、その納期に道路や家、ビルなどを完成させれば報酬を受け取れます。
一方で納期までに成果物が完成しなければ、どれだけの時間働いたかにかかわらず契約は不履行となるでしょう。
偽装請負に注意する
近年問題となってきているのが「偽装請負」という働き方です。
上記からわかるように、雇用契約と請負契約には違いがあり、雇用契約の方がより労働者を強力に守ってくれます。
そのため、本来なら雇用契約を結ぶべき労働者を請負契約として、長時間働かせたり、労働時間に見合った報酬を支払わなかったりするケースが発生しています。
これは偽装請負と呼ばれ、違反すると雇用主に罰則が科せられることもあるので注意が必要です。
偽装請負の特徴は、指揮命令下にあるかどうかどうかです。
もし請負業者に対して細かい指示を出していたり、勤怠管理を行っていたりする場合には偽装請負の疑いをもたれる恐れがあるので注意しなければなりません。
会社設立後の委託契約に関するポイント
会社設立後に結ぶ別の形の契約が委託契約です。
委託契約とはその名の通り、自社で対応できない業務を外部の業者や個人に依頼する契約のことです。
通常委託契約は弁護士などが行う法律行為に適用される言葉です。
しかし法律行為ではない業務を委託する準委託契約という契約があり、IT企業や建設業で用いられる委託契約はこちらの準委託契約を指す場合がほとんどです。
委託契約の大きなポイントは、仕事の完成や成果物を求めてはいないということです。
一定期間業務を委託したなら、その仕事に対して報酬を支払わなければなりません。
もし出来上がった成果物が期待通りでなかったとしても、委託契約の場合には報酬が発生します。
ただし、請負契約と委託契約との境目は難しく、仕事を依頼している状況によっては自分の認識と異なることがあるので十分な注意が必要です。
まとめ
会社設立後の契約の種類に注意を払って業務を進めよう
会社設立後には、状況によっていくつもの契約を同時に結ばなければならないかもしれません。
正社員として雇用契約を結ぶこともあれば、特定の業務だけを他の業者に依頼して委託契約を結ぶこともあるでしょう。
請負契約を締結して成果物を納品してもらうケースも考えられます。
これからどのような契約を結ぶことになるのかをよく理解したうえで、契約書の準備などを行うようにしましょう。
社会保険労務士や司法書士などの専門家にチェックを依頼することも場合によっては必要でしょう。