2024年4月に改正される改善基準告知は何が変わる?安全に働くためのルールを確認!
2024年01月12日
自動車運転者を対象とした「改善基準告示」が改正され、2024年4月から施行されます。
改善基準告示とは、トラックやタクシー・ハイヤー、バス運転者が知っておくべき労働時間や休息期間などの基準が詳しく定められたものです。
今回の改正により、運転者が健康を維持しながら、より安全に働くために必要な内容に変更されるため、事前によく確認しておきましょう。
改善基準告示とは?
改善基準告示の正式名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」といい、トラックやタクシー・ハイヤー、バス等の自動車運転者を対象として働くうえで守るべき基準を定めています。
ドライバーが健康に働けるようにすることはもちろん、国民の安全を守るためにも、労働条件の向上を図ることが必要です。
改善基準告示では、運転者の拘束時間の上限や、継続して与えられる必要がある休息期間などが設けられており、長時間労働を防ぐために守る必要があります。
2024年に改善基準告示が改正される背景は?
昨今は働き方改革関連法の改正など、働き方の多様化にともなってさまざまな取り組みが行われてきました。
とくに、労働時間に関する規制の見直しが進められ、企業にも過重労働の緩和を目指す動きが求められてきています。
しかし、自動車運転者は働き方が特殊であるため、一般的な規制の適用外でした。
長時間労働になりやすい自動車運転者の脳・心臓疾患が原因となる労災請求件数が増えてきていることもあり、運転者の健康を確保するためにも、改善基準告示の改正に至ったということです。
改善基準告示改正による主な変更点は?
2024年4月に改善基準告示が改正されることによる主な変更点を、トラック運転手、タクシー・ハイヤー運転手、バス運転手に分けてご紹介します。
それぞれ、何がどのように変更されたのかを確認しておきましょう。
参照:厚生労働省 労働基準局 監督課「改善基準告示の見直しについて」
トラック運転者の改善基準告示
トラック運転者の改善基準告知改正により、1年・1ヶ月・1日の拘束時間や1日の休息期間・連続運転時間などが以下のように設定されます。
1年・1ヶ月・1日の拘束時間
改正前まで、トラック運転者の1年の拘束時間は3,516時間以内、1ヶ月では原則293時間以内ということでした。
働く時間を減らして過重労働を防ぐために、改正後は以下のように変更されます。
・1年の拘束時間:原則3,300時間以内
・1ヶ月の拘束時間:原則284時間以内
労使協定により1年のうち6ヶ月までは1ヶ月において310時間まで延ばせますが、1年の拘束時間を合計して3,400時間以内にする必要があります。
1日の拘束時間
1日の拘束時間については、改正前は原則13時間以内とし「16時間まで延長」できました。
改正後は拘束時間に変更はありませんが、延ばせるのは「15時間まで」に変更されます。
ただし、1週間の運行がすべて走行距離450㎞以上の長距離であり、その運行において住所地以外の場所で休息を取る必要があった場合は、1週間に2回だけ、最大拘束時間を16時間にすることが認められます。
1日の休憩期間
改正前は「勤務終了後には8時間以上続けて休息を与えること」とされていましたが、改正後は「継続して与えるべき休息期間は11時間以上とし、継続9時間を下回らないようにする」というように変わります。
ただし、1週間の運行がすべて走行距離450㎞以上の長距離であり、その運行において住所地以外の場所で休息を取る必要があった場合は、1週間に2回「継続8時間以上」とすることが可能です。
この場合、運行が終了した際には12時間以上の休息期間を続けて与える必要があります。
運転時間・連続運転時間
改正前の運転時間は「2日を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間を超えないものとする」となっていました。
改正後も運転時間の条件は変わりません。
連続運転時間については、改正前も改正後も「上限4時間」ですが、改正後は「運転の中断は休憩でなければならない」という条件が追加されます。
つまり、休憩をしなければ「運転の中断」とは認められないため、例えば、作業のために運転を中断しても連続運転時間が途切れたことにはなりません。
タクシー・ハイヤー運転手の改善基準告示
タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告知改正における変更点をご紹介します。
日勤の運転者と隔勤の運転者で内容が異なる部分もあるため、確認しておきましょう。
1ヶ月の拘束時間
改正前は、日勤の場合、1ヶ月の拘束時間が「299時間を超えないこと」という規則でしたが、改正後は「288時間」になります。
隔勤の「1ヶ月の拘束時間262時間以内」「特別な事情がある場合において年6ヶ月まで1ヶ月の拘束時間を270時間まで延長できる」という点に変更ありません。
「特別な事情」とは、地方都市における顧客需要の状況や、大都市部における顧客需要の一時的増加等をいいます。
1日及び2暦日の拘束時間
改正前の日勤は、1日の拘束時間が「13時間以内」とされており、延長する場合であっても、最大拘束時間は「16時間」とされていました。
改正後は、最大拘束時間が16時間から15時間になります。
また「1日において14時間以上の拘束時間がある日を極力少なくするよう努める必要があり、最大でも週3回までが目安」とされています。
現状の隔勤においては「2暦日についての拘束時間が21時間を超えないようにする」という決まりですが、改正後は「22時間以内」に短縮され、さらに2回の隔日勤務を平均し、隔日勤務1回当たり21時間以内にするというのが今回の変更点です。
1日及び2暦日の休息期間
休息期間については、日勤の場合だと改正前は「勤務終了後、継続8時間以上与える」とされていましたが、改正後は「11時間以上を目安」に変更されます。
さらに「継続9時間を下回ってはならない」という事項が追加になるため、注意が必要です。
隔勤の場合は「勤務終了後、20時間以上の休息を継続して与える」から「24時間以上」になります。
また「継続22時間を下回ってはならない」という事項が追加になることも変更点の一つです。
車庫待ち等の自動車運転者について(日勤・隔勤)
車庫持ち等の自動車運転者についても、日勤と隔勤の場合で基準が異なるため、よく確認しておきましょう。
まず、日勤の場合は「1ヶ月の拘束期間を322時間まで延長できる」とされていましたが「延長は300時間まで」に変わります。
1日の拘束時間については、休息期間などに関する要件を満たしていれば「24時間まで延長できる」という内容のまま変わりません。
ハイヤー
ハイヤー運転者にはタクシー運転者の改善基準告示が適用されません。
時間外労働時間の範囲については「1ヶ月50時間、3ヶ月140時間、1年間450時間」から「1か月45時間、1年360時間を限度とし、1年で960時間を超えないもの」へと変わります。
また、運転者の疲労回復を図るために、勤務終了後に一定の休息期間を与える必要があります。
バス運転者の改善基準告示
バス運転者の改善基準告示は、拘束時間や休息時間・運転時間等に関する基準が以下のように改正されます。
1年・1か月の拘束時間
バス運転者の拘束時間については「1年で3,300時間、かつ1ヶ月で281時間を超えない」となります。
ただし、貸し切りバスや高速バスの運転者などは、1年のうち6ヶ月までは、年間3,400時間を超えなければ1ヶ月の拘束時間を294時間まで延ばせます。
ただし、1ヶ月の拘束時間が281時間を超える月が4ヶ月以上連続することは認められません。
1日の拘束時間
1日の拘束時間は、改正前だと「13時間以内とし、16時間を超えないようにする」という内容です。
改正後も1日の拘束時間は変わりませんが、最大拘束時間は15時間に変わります。
また、改正後は14時間を超える回数はできるだけ少なくするよう努める必要があり、週3回までを目安と定めています。
1日の休息期間
1日の休息時間については、改正前は「勤務終了後、継続8時間以上」とされていました。
改正後は「継続11時間以上とし、継続9時間を下回らないようにする」というように変更されます。
運転時間・連続運転時間
運転時間については「2日を平均し1日当たり9時間、4週間を平均し1週間当たり40時間を超えないものとする」ということでしたが、改正後も変更ありません。
連続運転時間は「4時間を超えないものとする」のままです。
ただし、高速バス及び貸切バスの高速道路の実車運行区間における連続運転時間は、2時間までとするよう努める必要があります。
まとめ
トラックやタクシー・ハイヤー、バス等の自動車運転者の拘束時間や休憩時間等の基準を定めたものが「改善基準告示」です。
運転者の健康と国民の安全を守ることを最大の目的とし、2024年4月に改善基準告示は改正されます。
本記事では、トラックの運転者、タクシー・ハイヤーの運転者、バスの運転者ごとに改善基準告示改正による変更点をまとめました。
何がどのように変更になるのか、改正前に詳しく確認しておくとよいでしょう。