安全運転管理者とは?選任条件や業務内容などを解説!
2024年11月15日
「安全運転管理者」という役職をご存知でしょうか。
安全運転管理者は、安全運転管理者制度によって一定台数以上自動車を使用する事業所において選任が義務付けられています。
運転者が事故を起こさず安全に運転するために、さまざまな業務の実施しなければなりません。
本記事では、安全運転管理者の概要や安全運転管理者の選任基準、業務内容などを解説します。
事故を防止し安全に業務を実施したい事業所の方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
安全運転管理者とは
安全運転管理者とは、複数台自動車を使用する事業所で事故防止と安全確保のための業務を実施する責任者のことです。
安全運転管理者制度によって、自動車を使用する事業所に対して安全運転管理者の選任が義務付けられています。
安全運転管理者制度は、事業所が所有する自動車を適切に管理することで業務中の事故を防ぎ、従業員だけでなく国民の安全を確保するために開始されました。
そのため、安全運転管理者は事業所全体で事故を起こさないよう、安全運転の意識向上や事業所の信頼度向上に重要な役割を果たします。
安全運転管理者を選任すべき2つの理由
一定台数自動車を所有する事業所は、安全運転管理者を選任しなければいけません。
安全運転管理者を選任しなければいけない理由として、以下2つが考えられます。
- 法律で義務付けられているため
- 安全を確保するため
それぞれの理由について、解説します。
法律で義務付けられているため
安全運転管理者を選任しなければいけないのは、法律で定められているからです。
安全運転管理者の選任は、道路交通法道路交通法第七十四条の三で義務付けられています。
法律違反をすると罰則を科せられるだけでなく、「この企業は法律違反をする会社」という印象を与えてしまい、社会的信頼も失いかねません。
社会的信頼が失われると取引先が減少する可能性があり、企業の存続が難しくなる恐れがあります。
罰則や社会的信頼を失わないために、一定台数自動車を所有する企業は必ず法律にしたがって安全運転管理者を選任しましょう。
安全を確保するため
安全運転管理者の選任は、安全を確保するためにも必要です。
業務中に事故を起こすと、従業員や一般人を巻き込む可能性があります。
最悪の場合、命を落としかねません。
車両や運転手の管理、教育など事故防止や安全確保のための役割を果たす安全運転管理者を選任し、従業員または国民の安全を守るようにしましょう。
安全運転管理者が必要な事業所とは
自動車を所有するすべての事業所で、安全運転管理者の選任が義務付けられているわけではありません。
安全運転管理者が必要な事業所は、以下条件に当てはまる事業所です。
- 乗車定員が11人以上の自動車が1台以上ある
- その他の自動車が5台以上ある(大型または普通自動二輪車は0.5台として計算する)
この条件に当てはまる事業所は、安全運転管理者を1人選任するようにしましょう。
事業所によっては「副安全運転管理者」も必要
安全運転管理者の選任だけでなく、以下条件に当てはまる事業所は副安全運転管理者を選任する必要があります。
- 自動車の台数が20台以上40台未満の場合、1人任命する
- 40台以上の場合、20台ごとに1人追加する
副安全運転管理者は安全運転管理者のサポート役ではありますが、安全運転管理者と同じように安全確保のために重要な役割を果たします。
安全運転管理者は事業所に最低1人いればよいのですが、副安全運転管理者は自動車の台数によって増やさなければいけません。
所有台数が多い場合は、規定人数の副安全運転管理者を選任しましょう。
安全運転管理者を選ぶときの基準
安全運転管理者は誰でもなれるわけではありません。
以下の条件に当てはまる人を安全運転管理者に選任しましょう。
- 20歳以上(副安全運転管理者がいる場合は30歳以上)
- 自動車の運転の管理に関して2年以上の実務経験がある
副安全運転管理者の場合は、20歳以上で自動車の運転の管理に関し1年以上の経験があるという条件を満たしている必要があります。
欠格事項に該当すると安全運転管理者になれない
安全運転管理者の条件に満たしていたとしても、以下に当てはまる場合は安全運転管理者にはなれません。
- 過去2年以内に都道府県公安委員会による安全運転管理者等の解任命令を受けている
- 次の違反をして2年経過していない
※酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、妨害運転、無免許運転、救護義務違反、飲酒運転に関し車両等を提供する行為、酒類を提供する行為および要求・依頼して同乗する行為、無免許運転に関し自動車等を提供する行為および要求・依頼して同乗する行為、自動車の使用制限命令違反 - 次の違反を下命・容認してから2年経過していない
※酒酔い・酒気帯び運転、麻薬等運転、過労運転、無免許運転、大型自動車等の無資格運転、最高速度違反、積載制限違反運転、放置駐車違反
安全運転管理者を選任する場合は、欠格事項に当てはまっていないか必ず確認しましょう。
安全運転管理者の業務
道路交通法施行規則によって、安全運転管理者の業務が定められています。
この章では、安全運転管理者の業務を解説します。
運転者の状況把握
例えば、運転免許証の有効期限や過去の運転経歴を確認する作業が該当します。
また、健康診断の実施により運転者の健康状況に問題がないか確認することも重要です。
運転者の技能や適性、知識、法令や処分の遵守状況などを把握するための対応をします。
運行計画の作成
運行計画とは、運行ルートや運転時間・休憩時間などを記載したものです。
運転者が安全に運転するためには、事前に計画を立てておくことが重要です。
運行計画を作成する際は、以下を違反しないように注意しましょう。
- 最高速度
- 過積載運転
- 過労運転
- 放置駐車違反 など
長距離、夜間運転時の交代要員の配置
企業の業務内容によっては、長距離運転や夜間運転を実施する場合もあります。
長距離運転や夜間運転は、疲労などで安全な運転が難しくなる可能性があります。
安全運転を確保するために、事前に交代運転手を準備しておくのも安全運転管理者の業務の1つです。
異常気象時等の安全確保の措置
自然災害や異常気象などによって安全な運転が難しくなる場合があります。
その際に、安全を確保するために、運転手に適切な指示や安全確保につながる対応をします。
例えば、大雨や大雪によって運転が困難な場合は、業務を中断するなどの判断が必要になるでしょう。
安全運転の指示
安全運転の指示では「点呼を実施」が重要です。
具体的には以下のような運転に支障をきたす要因がないかを確認しましょう。
- 自動車点検の実施状況
- 飲酒
- 過労
- 病気 など
また、運転手が事故なく安全に運転するために、休憩のタイミングや運転のアドバイスなども重要です。
運転者の酒気帯びの有無の確認
アルコール摂取の有無は、運転開始前と終了後に目視とアルコール検知器で確認します。
令和5年12月1日からは、目視確認に加え、国家公安委員会で定めたアルコール検知器での確認も必須となりました。
アルコールが入っていると正常な判断ができず、事故が起きる可能性が高まります。
実際、飲酒運転による事故も起きています。
安全運転をするためには、アルコールの有無の確認は重要な業務です。
酒気帯びの記録の保存・アルコール検知器の保持
アルコール有無の確認後は、その内容を記録し1年間保存しなければいけません。
記録を保存することで、何かあったときでも正確な監査が可能となります。
また、記録の保存に加えて、アルコール検知器の常時有効保持も必須です。
いつでも使用できるアルコール検知器を保持することで、必要なときにすぐに測定できるようになります。
運転日誌の備え付けと記録
運転者には、以下内容を記載する日誌をつけるように指示をします。
- 運転者の名前
- 運転開始と終了の日時
- 運転した距離 など
運転日誌に情報を記録することで、管理や運転状況の把握がしやすくなります。
最初に作成した運行計画通りに進んでいるかを確認することも重要です。
運転者に対する安全運転指導
安全運転をするために、運転者に以下のような指導を実施することが重要です。
- 運転に関する技術や知識
- 交通ルール
- 交通事故対策
- 正しい運転方法 など
運転初心者や不安がある方への指導はもちろん、運転に慣れて油断している方への指導も欠かせません。
運転に慣れている人ほど「だろう運転」や「ながら運転」が増える傾向にあります。
最近ではスマホを使用しながら運転する人もいるため、正しい指導は重要でしょう。
安全運転管理者の届け出方法
安全運転管理者の選任後は、選任日から15日以内に都道府県公安委員会に届け出をしなければいけません。
届け出の方法には、以下3つの方法があります。
- 事業所を管轄している警察署の交通課窓口に提出する
- 事業所を管轄している警察署の交通課窓口に郵送する(一部都道府県では対応不可)
- オンライン申請
申請書の書式は管轄している警察署によって異なる場合があります。
ホームページで確認できる警察署もあるので、事前に確認しておきましょう。
また、申請書のほかにも書類の提出が必要なケースもあります。
不備がないように、必要書類も事前にホームページなどで確認しておきましょう。
まとめ
安全運転管理者とは、事故防止と安全確保のためにさまざまな業務を実施する責任者のことです。
一定台数以上自動車を所有する事業所において、安全運転管理者の選任は義務付けられています。
安全運転管理者は誰でもなれるわけではなく、基準を満たしている人物を選任する必要があります。
選任基準を把握し、適した人物を選びましょう。
安全運転管理者の業務は、運転者の状況把握や運航計画の作成、酒気帯びの確認、安全運転指導など多岐にわたります。
事故を起こさず安全を確保するために重要な役割を果たしているため、自動車を所有する事業所は必ず選任するようにしましょう。