安全運転管理者の罰則とは?違反にならないための対策も解説
2024年11月22日
「安全運転管理者が必要だが、選任しなかったり業務をしなかったりしたら罰則があるのか」と疑問に感じている方はいるのではないでしょうか。
安全運転管理者の選任は法律で義務付けており、該当する事業所は必ず1人は選任する必要があります。
本記事では、安全運転管理者の罰則や罰則を受けないための対策などを解説します。
罰則によって経済的損失や社会的信頼の低下を起こさないために、ぜひ参考にしてください。
Contents
安全運転管理者の9つの業務
安全運転管理者とは、複数台自動車を使用する事業所で、事故防止と安全確保のための業務を実施する責任者です。
安全運転管理者は、事業所全体で事故を起こさないよう以下9つの業務を実施します。
● 運転者の状況把握
● 運行計画の作成
● 長距離、夜間運転時の交代要員の配置
● 異常気象時等の安全確保の措置
● 安全運転の指示
● 運転者の酒気帯びの有無の確認
● 酒気帯びの記録の保存・アルコール検知器の保持
● 運転日誌の備え付けと記録
● 運転者に対する安全運転指導
安全運転管理者が業務をしなかったときの罰則
安全運転管理者が業務を実施しなかった場合、4つの罰則に科せられる可能性があります。
罰則とならないように、違反となる行為を把握しておきましょう。
選任義務違反
選任義務違反とは、安全運転管理者が必要な事業所が、安全運転管理者を選任しなかった場合に科せられる罰則です。
一定台数以上自動車を所有する事業所は、安全運転管理者を選任しなければいけないと道路交通法で定められています。
そのため、選任しなかった場合、行政機関などにより罰則や警告の対象となる可能性があります。
選任義務違反となった場合、50万円以下の罰金です。
2022年までは罰金は5万円でしたが、改正によって変更されました。
解任命令違反
解任命令違反は、安全運転管理者の解任についての通知や命令を無視した場合に科させる罰則です。
道路交通法第74条の3第6項 では、安全運転管理者が選任条件を満たしていない、または業務を実施していないと判断された場合は、安全運転管理者の解任を命じられると定められています。
解任命令を無視して適していない人物を安全運転管理者に選任し続けると、50万円以下の罰金が科せられるかもしれません。
選任義務違反と同様、2022年の改正によって罰金が50万円以下となりました。
是正措置命令違反
公安委員会からの是正措置命令を無視した場合に科させる罰則が、是正措置命令違反です。
道路交通法第74条の3 第7項と第8項によると、安全運転管理者が必要な事業所は安全確保に必要な機材の整備や対策などの是正措置を実施しなければならないと定められています。
是正措置に従わず機材の整備や対策などを怠った場合、50万円以下の罰金を支払うことになるかもしれません。
選任解任届出義務違反
選任解任届出義務違反は、安全運転管理者を選任または解任した際に15日以内に届け出をしなかった場合に科される罰則です。
選任解任届出義務違反となった場合、50万円以下の罰金が科されます。
また、安全運転管理者だけでなく副安全運転管理者の選任や解任の届け出も15日以内に行う必要があります。
安全運転管理者に関する罰則の事例
安全運転管理者の罰則は法律で明記されていますが、本当に罰金などが科されるのか気になるポイントでしょう。
安全運転管理者の罰則が科された事例を2件ご紹介します。
安全運転管理者を置かなかった例
2021年千葉県八街市で、飲酒運転をしていたトラックが小学生の列に突っ込むという事故が起きました。
トラック運転手を雇用していた会社では、安全運転管理者の選任が必要だったのにもかかわらず、配置していなかったようです。
そのため、トラック運転手だけでなく勤務していた会社にも責任があるとして、道路交通法違反として5万円の罰金が科されました。
また、この事件をきっかけに、安全運転管理者の罰則の改正が行われました。
安全運転管理者が適切に管理していなかった例
2016年長野県軽井沢町で、スキーバス転落事故が起きました。
事故を起こしたバス運行会社では、安全運転管理者によるバス運転手の技量の確認や安全に関する適切な指導、監督を怠っていたようです。
そのため、バス運行会社の社長と安全運転管理者に、実刑判決が言い渡されました。
安全運転管理者の罰則が厳しくなった理由
安全運転管理者制度の罰則は、2022年の法改正によって罰金の引き上げと罰則の追加が行われました。
その理由は、過去に大きな交通事故が起きたからだと考えられます。
特に、2021年6月に千葉県で起きた下校中の児童たちにトラックが突っ込んだ事故は、トラック運転手だけでなく、安全運転管理者を選任していなかった企業側の管理体制も問題となりました。
このような事故が起こらないように、また従業員や国民の安全確保のために、安全運転管理者の選任が重要であると認識され、2022年に厳しい内容に改正されました。
安全運転管理者が業務をしなかった場合のリスク
安全を確保しながら事業を継続させるためには、安全運転管理者の業務は重要な役割を果たします。
そのため、安全運転管理者が業務を実施しないと、企業の存続が難しくなる事態になるかもしれません。
安全運転管理者が業務を実施しなかった場合のリスクを解説します。
法律違反となる
安全運転管理者の選任は、道路交通法第74条の3で義務付けられているため、安全運転管理者を選任しないと法律違反となります。
また、選任するだけでなく、安全運転管理者は安全確保に必要な機材の整備や対策などを実施する必要があります。
名前だけの安全運転管理者だと違反となる可能性があるため、安全のために責任もって業務を行いましょう。
飲酒運転で事故を起こす可能性がある
安全運転管理者が業務を実施しないと、飲酒運転で事故を起こす可能性が高くなります。
アルコールが入っていると、普段慣れている業務でも正常な判断ができなかったり、集中力が維持できなかったりして事故につながりかねません。
事故を起こす確率を下げるため、安全運転管理者によるアルコールの有無の確認やアルコールチェックの記録などが重要です。
また、アルコールチェックをしなかったことで事故が起きた場合、従業員だけでなく企業や安全運転管理者にも損害賠償が請求されるケースもあります。
企業が安全に継続して事業を続けていくために、安全運転管理者は日々の業務にしっかり取り組みましょう。
企業の社会的信頼が低下する
安全運転管理者が業務を実施しないことで、法律違反となったり、交通事故を起こしたりした場合、企業の社会的信頼が失われる可能性があります。
社会的信頼が失われると、取引先や顧客が離れていき事業の継続が難しくなるかもしれません。
信頼を得ながら事業を継続するために、安全運転管理者は定められた業務を実施しましょう。
罰則を受けないための対策
企業が社会的信頼を失わずに事業を継続していくためには、罰則の受けないようにする必要があります。
この章では、罰則を受けないための対策を解説します。
選任基準を満たした人物を安全運転管理者に選任する
罰則を受けないためには、選任基準を満たした人を安全運転管理者に選任しましょう。
基準を満たしていない人を選任すると、解任命令違反となり罰金50万円以下を科せられる可能性があります。
安全運転管理者の選任基準は、以下のとおりです。
● 20歳以上(副安全運転管理者がいる場合は30歳以上)
● 自動車の運転の管理に関し2年以上の実務の経験がある
● 過去2年以内に都道府県公安委員会による解任命令を受けていない
● 飲酒運転や妨害運転、無免許運転などの違反を2年以内にしていない
● 飲酒運転や過労運転、放置駐車違反などの違反の下命、容認を2年以内にしていない
安全運転管理者を選任する際は、基準を必ず守るようにしましょう。
安全運転管理者の選任や解任をしたときは期日までに届け出を出す
安全運転管理者を選任または解任した際は、15日以内に都道府県公安委員会に届け出をしましょう。
15日以内に届け出ができなかった場合、選任解任届出義務違反となり罰金5万円以下に科せられる可能性があります。
届け出に必要な書類は、以下4つです。
● 届出書(安全運転管理者に関する届出書)
● 戸籍抄本または本籍の記載がある住民票のコピー
● 運転免許証のコピー
● 運転記録証明書(3年間または5年間)
解任の場合は、届出書のみが必要となります。
必要書類は都道府県によって異なる場合があるため、事前にホームページなどで確認しましょう。
また、届け出方法は、管轄の警察署に行く、管轄の警察署に郵送する、オンライン申請の3つの方法があります。
いずれかの方法で、期日以内に届け出をするようにしましょう。
安全運転管理者等に対する講習を受ける
安全運転管理者の罰則を受けないために、講習を受けるようにしましょう。
安全運転管理者は年に1回、講習を受けることが道路交通法第74条の3第9項で義務付けられています。
講習では、以下のような内容を学びます。
● 自動車や道路交通に関する知識
● 自動車の安全な運転に必要な知識
● 運転者に対する安全教育に必要な知識と技能
● 安全運転に必要な知識および技能
講習の日程や受講料は、都道府県によって異なるため、各都道府県のホームページで確認して、忘れずに受講しましょう。
まとめ
安全運転管理者を選任しなかったり、業務を実施しなかったりすると罰則が科せられます。
違反によっては最高50万円以下の罰金を支払うことになるかもしれません。
安全運転管理者が業務を実施しないと、交通事故のリスクが高まる、企業の社会的信頼が低下するなど悪影響を及ぼす可能性があります。
安全運転管理者の選任基準を守る、年に1回の講習を受講し安全に関する知識やスキルをアップデートするなどして、違反とならないようにしましょう。